OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

『超ハイリスク大動脈弁狭窄症患者へのTAVI施行例』~2尖弁に対するTAVIは緊急でも可能か~


手術翌日の動画(患者さんの許諾を得ています)をご覧ください。

先週、大動脈弁狭窄症および重症心不全にて当院に搬送となり、緊急でTAVIを施行した症例を供覧いたします。

緊急CT検査の結果を、放射線科、消化器内科、呼吸器内科と一緒に検討、確認をして(チーム医療)、TAVIでの治療を行うことになりました。重症の心不全を患い、しかも弁が2尖弁(本来3つに分かれて動くところが、2つにしか分かれていない異形)で石灰化も進んで固くなり、弁輪(弁のまわり)とくっついているという、非常に難しい状態でした。そのためバルーンで広げるタイプのデバイスでは(Sapien3でも)不可能と判断して、CoreValve(日本メドトロニックMedtronic社製の自己拡張型経カテーテル大動脈生体弁システム)を使用しました。

2尖弁における弁選択の計測は3尖弁とは全く違い、Basal ringより5mm上方(大動脈側)より1mm刻みで10mmまで収縮期の弁の開きを測定します(弁が入った場合を考慮してやや大きめを測定)。そのサイズを元に、弁を選択します。そのため今回もBasal ringはperimeterで80mm以上ありましたが、5mm以上からは70mm以下であったため、CoreValve 26mmを選択しました。

手術は、全身麻酔、PCPS stand-byで行い、心室はかなり心不全で拡張していたため、Safari-Sを使用。弁の石灰化が強すぎ、CoreValveのデプロイ後nose-coneが抜去出来ない場合を考え、16mm balloonでBAVを久しぶりに行いました。それにてwireを十分に心尖に圧着させ、挿入しました。弁が1/3開いたところで、ダイブを恐れて120程度でRapid pacing施行し、いい位置に挿入できました。2尖弁で且つ上行大動脈がHorizontal positionとのことで、心配したのですが、なかなかいいチームプレーでした。

無事に手術は成功し、翌日には患者さんは院内をどこまでも歩いていこうとするほどの、見事な回復を見せてくださいました。

 

※医師の方には「詳細データ掲載スライド群」「エコー動画集」を用意しております。QLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。ただし無断転用はご遠慮ください。
https://qlifebox.jp/handai/

Sapien3の症例動画・ダイジェスト版

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以前に日本初のサピエン3経大腿システム症例を報告しましたが、その詳細動画を供覧いたします。
Sapien3は、エドワーズライフサイエンス社製の新しいTAVIデバイスで、SapienXTの後継品です。LV側にcuffが装備され、perileakを大幅に減らせると言われています。
ただ、動画を見ていただいてもわかりますが、デバイスが大動脈側にデプロイ中に移動するという若干恐ろしい現象が生じて(注:これは想定の動きらしいです)、少し緊張します。また、Pacemaker植え込みの率が高いとか、ST junctionに接触しやすくなり損傷はないのか、弁が長くなったので冠動脈の閉塞やPCIがやりにくくなるとか色々なことが提示されてはいます。
とはいえ、これが世界的には標準の世代のデバイスであることも事実です。日本にとっては(特に患者さんのことを考えると)、新しいデバイスをどんどん導入してはやく世界水準になることが大事と思います!その意味で、ぜひシェアをお願いいたします。なおダイジェスト版ですので、実際の時間より2倍速の動画となっています。
※医師の方はフルの動画集(順を追って全9ファイルで構成されます)を、QLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。ただし無断転用はご遠慮ください。

 

htpps://qlifebox.jp/handai/

米国学会たより

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5月14日から18日までアメリカ胸部外科学会(American Association for Thoracic Surgery: AATS)が開催されました。
阪大の心臓血管外科から仲村先生、熱田先生、金谷先生、横山先生が参加をして、当教室からは桝田浩禎先生が参加してきました。
桝田先生いわく、「教科書にも出てくる有名な先生方がこの壇上に上がり、この巨大スクリーン一面に映し出されながら発表されていました。海外学会っていろんなところがかっこいいですね。いつかこんな大舞台で発表してみたいとモチベーションが上がりました。」

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今年の開催地は、メリーランド州ボルチモア(Baltimore)です。
古くから港町として栄えた街で、学会会場は、観光名所でもあるインナーハーバーのすぐ近くです。
広大なアメリカでは大きな建物はあっても密集していないため空が広く、日差しが強く感じられました。

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会場は、Baltimore Convention Center  です。モーターショーなども行われるほど大きい会場です。

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こんな噴水が会場のなかにあるくらい、本当に大きな会場でした。なかなか日本では見かけない規模です。

日本初の、Sapien3を使った治療を施行

日本初の、Sapien3(エドワーズライフサイエンス社製の新しいTAVIデバイス)を使った治療を、施行しました。患者さんにとって、低侵襲治療の選択肢がまた一つ増えました!
症例は87歳男性です。心不全症状を有する重症大動脈弁狭窄症で、26mm弁をNormal balloon sizeでTAVIを使用しました。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その4

今年の市民講座(一般の皆さまが参加できる会)は、講演会だけでなく、ワークショップも行いました。写真は「君が外科医になるセミナー」というイベントのワンシーンです。【日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会】という団体の主催するイベントでした。
小学生、中学生、高校生、医学生を対象にしており「みなさんに外科手技に触れてもらうことで、将来少しでも外科医を目指してもらう人が増えるように!」との想いで近年試みられているイベントです。

 

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夢中でカテーテル操作や縫合の練習をする子供たちの視線はとても純粋で熱いものでした。中学生がカテーテルを用いた大動脈弁植込み術(TAVI)を行い、当科の前田先生が指導しているシーンです。実際の手術と同じ画像をモニターに出し、シミュレータを用いてTAVIを行ってもらいました。中学生たちが本物と同じカテーテルを操作し、今からまさに人工弁を植込もうとしているところで、弁の至適位置を前田先生が指導しているところです。

 

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中学生が冠動脈バイパス術を行い、当科の矢嶋先生が指導しているところです。天皇陛下が受けた手術と同じ手術を中学生に模擬血管を用いて行ってもらいました。この手術に使用する糸は髪の毛よりも細く、非常に繊細な技術が必要です。実際の手術で使用する糸を用いて中学生に血管吻合をしてもらいました。難しかったとは思いますが、実際に使う器具や糸、扱う血管の細さなど日常生活では決して体験できないことを体験してもらえたと思います。将来、医学の道に進んでもらえたら嬉しいですね!もちろん、外科医として我々の仲間になってくれたら最高です。

 

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中学生に皮膚縫合をしてもらっているところです。実際の器具、針、糸を使用してもらい人工皮膚を縫合してもらいました。外科手技の基本である縫合、結紮(けっさつ)を体験していただきました。糸結びは初めはみんな難しそうにしていたのですが、みんな要領を得るとどんどん上手に結べるようになり、中には外科医顔負けの強者もいました。指導する側のスタッフも、自然と熱が入ります。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その3

参加者の親睦を図るための「前夜祭」「全員懇親会」も行われました・・・外科医師の数が急激に減少している昨今で相互連携を深めていくきっかけを提供できたでしょうか?研究発表やディスカッションの場とは違う華やかな雰囲気で、準備の苦労も吹き飛びました。

 

f:id:OsakaMICT:20160517105219j:plain拡大プログラム委員会という学会の前夜祭にあたる会で、ジャズ歌手のマリーンさんに登場していただきました。会場全体で盛り上がり、最後は会頭の澤教授も壇上に上がりました。 

 

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大阪出身でワインのソムリエでもある辰巳琢郎さんには前夜祭のワインを選んでいただきました。辰巳琢郎さんのお嬢さんの真理恵さんはソプラノ歌手として活躍されており、前夜祭でもその美声を披露していただきました。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その2

日本外科学会といえば、外科系学会で最大級です。無事に成功させることは、大阪大学外科学講座に所属する全員の使命でした。

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だるま(次期日本外科学会会頭である群馬大学の桑野博行教授からいただきました)を用意したのですが、無事に成功して両方に点睛することができました!今、このだるまは教授室に飾られています!

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多くの方から我々スタッフに対してねぎらいの言葉を頂戴し、感慨ひとしおでした!有難うございました。