OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

感染性大動脈瘤に対するステントグラフト治療の有用性が示された症例

感染性大動脈瘤に対し、ステントグラフト治療の有用性があることを報告した我々の研究が心臓血管外科学会の優秀演題に選出されましたが、今回は、まさにそのステントグラフト治療の有用性が示された症例をご報告致します。

 

基礎疾患に糖尿病をもつ73歳男性。

1ヶ月近くの腹痛と発熱を繰り返し、精査目的のCTにて感染性胸腹部大動脈瘤を指摘されました。

当科入院時、WBC13800、CRP15.55と高値を認め、血液培養では肺炎球菌を検出しました。

造影CTでは、急速に拡大する6cm大の嚢状胸腹部大動脈を認め、破裂の危険性が高いと判断しました。

TEVARではSMAのプロテクションワイヤーを一時的に留置し、腹腔動脈を閉塞する形でSMA直上にステントグラフトを留置しました。

術後は感受性を考慮した抗生剤治療を継続し、術後1週間でWBC7000、CRP2.54と著明に低下し、術後4週間でCRPが陰性化しました。

術後1ヶ月でのCTでは、大動脈瘤の著明な縮小を認めております。

今後も引き続き、内服での抗生剤治療の継続は必要ですが、感染性大動脈瘤に対してステントグラフト治療が非常に有用であった1例となりました。

 

⇒術中の映像を供覧しました。ぜひ関係の皆様にてシェアしてくださるようお願いいたします。


感染性大動脈瘤に対するステントグラフト治療

 

★医師の方は術前と術後のCT画像をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。

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当院19例目の二尖弁ASに対するTAVIを行いました。

今週当院19例目の二尖弁ASに対するTAVIを行いました。
いわゆるtype 0型ですがEvolut Rを用いてPVL: trivialで終了。
二尖弁は一般的にTAVIが困難とされていますが、当院ではこれまでのノウハウをいかし、非常に良好な成績が得られております。
お悩みの方がおられましたらご連絡ください!

 


Evolut R for BAV

総腸骨動脈瘤に対する新しいステントグラフト治療!!

今までの総腸骨動脈瘤に対するステントグラフト治療では、内腸骨動脈を温存することが不可能でした。

今回使用したGore社の新しいデバイスIBE(Iliac Branch Endoprosthesis)は、Excluderと組み合わせることで、今まで通りの鼠径部皮膚切開で内腸骨動脈を温存したステントグラフト治療が可能となりました。

最初に総腸骨動脈用のデバイスを挿入し、その対側から内腸骨動脈用のデバイスを挿入し、最後にメインのExcluderのデバイスを挿入し完成させます。

先日、当院1例目の患者さまに治療を行い、見事に成功しました。

総腸骨動脈瘤の患者さまに、新しい低侵襲治療のオプションとして内腸骨動脈の血流を温存した上で、体に優しい治療が提供できると期待される新しいステントグラフト治療です。


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総腸骨動脈瘤に対する新しいステントグラフト治療

 

★医師の方は術前と術後のCT映像をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。

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中川敬也先生が第47回日本心臓血管外科学会学術総会にて優秀演題賞を受賞しました。

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阪大大血管治療チームの若手のホープ、中川敬也先生が2017年第47回日本心臓血管外科学会学術総会にて優秀演題賞を受賞しました。
演題は「感染性大動脈瘤に対するステントグラフト治療後の遠隔成績及び感染制御因子の検討」。
これまで有効性に議論があった感染性大動脈瘤に対するステントグラフト治療に一定の有用性があることを示し、またその限界を解析したことが評価されました。
感染性大動脈瘤は治療の難しい病気ですが、今回の解析結果をもとに、全ての患者さんに最適な治療を提供できれば嬉しいです!

 

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日本初のEvolut R成功!


日本初のEvolut R成功!
本日、国内承認済みのdevice「Evolut R」の植込みに成功しました(当院410例目)。CoreValveと形はそっくりですが、動作が全く違いました。しかしBrian先生の指導のもと完璧な位置で植込みました。もちろんblockもなく、leakもtrivial。CoreValve同様supraannularのため、狭小弁をお持ちの患者様には有用なのはもちろんの事、やり直しが可能(recapturable)となりますから(もっとも、本日は必要ありませんでしたが・・・)、今後は国内でも急速に普及する可能性を感じました。はっきり言って予想以上です。
大阪大学TAVI teamは、今後も最先端の低侵襲治療を患者様に提供し続けます。

 

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Brian先生と倉谷教授。

 

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本日のチーム。

大阪大学においてTAVI400例を達成!

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昨日、ついに通算TAVI症例400例を達成しました!

思えば2
009年からの長い道のりでしたが、これまで多くの高リスク患者さんを治療しつつも「術後30日死亡1.0%」と極めて良好な成績を収めることができたのは、支えていただきましたメンバーの皆さんのたゆまぬ努力の賜物と思っています。これからも日本のTAVIのパイオニアとして、良質な治療を提供すべく精進して参ります!今後とも何卒よろしくお願いいたします

 
※TAVI=経カテーテル的大動脈弁植え込み術

腎動脈を巻き込んだ腹部大動脈瘤の新術式「ChEVAS」は、素晴らしい!


「ChEVAS」=chimney+EVASを組み合わせた新しい治療法の症例動画を、供覧いたします。

【背景】
腎動脈下腹部大動脈(Infra-renal type AAA)に対して1990年代よりステントグラフト治療(Endoavascular
aortic repair: EVAR)が行われ、その低侵襲性のため広く世界中に普及しています。しかし腎動脈を巻き込んだ腹部大動脈瘤(Jucsta-renal
type AAA)に対してEVARで治療する場合は、
1.開窓型custom-made deviceを使用し
2.Chimney graft techniqueで手術する
のが通常です。
開窓型デバイスは世界で用いられていますが、日本では保険適用外であり、かつcustom-madeなので一つひとつのデバイスに安全性は担保されません。またchimney
graft techniqueは、デバイスの使途としてそもそもoff-label
useであり、かつ近年中枢側のステントグラフト間(gutter)からのendoleakが大きな問題となっています。
【ChEVASの特徴】
そこで登場したのがNellixを用いたEndovascular aortic sealing (EVAS)とchimney graft
techniqueを組み合わせた「ChEVAS(チーバス)」という術式です。Nellixは、今年3月に阪大による本邦初症例の成功をこのページでも報告したとおりです。瘤内および中枢側と末梢側にendobagという拡張性の強い袋の中にpolymerを注入することにより、全体を固定して、endoleakを防ぐしくみです。
今回のChEVASはこのpolymerによる固定のしくみを利用した訳です。中枢側に腎動脈に挿入した細い2本のステントグラフトとNellix2本、計4本のステントグラフトをpolymerで固定しました。
【今後の期待】
この術式を利用すれば、通常のChimneyと違ってgutterからのendoleakに困ることなく治療することができて、安全性向上と患者負担軽減が図れます。さらには、SMA(上腸間膜動脈)を巻き込んだ胸腹部大動脈瘤へも、同じ術式が利用できる可能性があります。

Nellixの早急な保険承認を切に期待します。

⇒実際の症例ビデオを用意しましたので、ぜひ関係の皆様にてシェアしてくださるようお願いいたします。

★医師の方はフルの動画(術前のマルチスライスCT画像も含まれます)を、QLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。
https://qlifebox.jp/handai/