OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

腎動脈を巻き込んだ腹部大動脈瘤の新術式「ChEVAS」は、素晴らしい!


「ChEVAS」=chimney+EVASを組み合わせた新しい治療法の症例動画を、供覧いたします。

【背景】
腎動脈下腹部大動脈(Infra-renal type AAA)に対して1990年代よりステントグラフト治療(Endoavascular
aortic repair: EVAR)が行われ、その低侵襲性のため広く世界中に普及しています。しかし腎動脈を巻き込んだ腹部大動脈瘤(Jucsta-renal
type AAA)に対してEVARで治療する場合は、
1.開窓型custom-made deviceを使用し
2.Chimney graft techniqueで手術する
のが通常です。
開窓型デバイスは世界で用いられていますが、日本では保険適用外であり、かつcustom-madeなので一つひとつのデバイスに安全性は担保されません。またchimney
graft techniqueは、デバイスの使途としてそもそもoff-label
useであり、かつ近年中枢側のステントグラフト間(gutter)からのendoleakが大きな問題となっています。
【ChEVASの特徴】
そこで登場したのがNellixを用いたEndovascular aortic sealing (EVAS)とchimney graft
techniqueを組み合わせた「ChEVAS(チーバス)」という術式です。Nellixは、今年3月に阪大による本邦初症例の成功をこのページでも報告したとおりです。瘤内および中枢側と末梢側にendobagという拡張性の強い袋の中にpolymerを注入することにより、全体を固定して、endoleakを防ぐしくみです。
今回のChEVASはこのpolymerによる固定のしくみを利用した訳です。中枢側に腎動脈に挿入した細い2本のステントグラフトとNellix2本、計4本のステントグラフトをpolymerで固定しました。
【今後の期待】
この術式を利用すれば、通常のChimneyと違ってgutterからのendoleakに困ることなく治療することができて、安全性向上と患者負担軽減が図れます。さらには、SMA(上腸間膜動脈)を巻き込んだ胸腹部大動脈瘤へも、同じ術式が利用できる可能性があります。

Nellixの早急な保険承認を切に期待します。

⇒実際の症例ビデオを用意しましたので、ぜひ関係の皆様にてシェアしてくださるようお願いいたします。

★医師の方はフルの動画(術前のマルチスライスCT画像も含まれます)を、QLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。
https://qlifebox.jp/handai/