OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

切らない弓部大動脈瘤手術---枝付きステントグラフト(Bolton double side branch device)症例を供覧します

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(一般の方向け説明)

これまで、弓部大動脈瘤(脳に血流を送る3本の血管が枝分かれしている弓部大動脈に大動脈瘤ができたもの)に対する手術といえば、胸を切開して、心臓を止めて、脳及び体に体外循環装置から血流を送り続けながら、その部分を全て人工血管に替える大手術が必要でした。

それに代わりここ数年は、ステントグラフト内挿術および頚部分枝バイパス術を併用したハイブリッド手術が行われるようになり、侵襲度が従来に比べて減りました。ただ患者さんからすればこれも身体に優しい治療とは言えず、特に高齢の患者さんや他の病気を合わせてお持ちの患者さんにとっては辛い手術でした。

そこで我々は、最近「枝付きステントグラフト」を用いた手術を行うようになりました。この方法ならば、数カ所小さな切開は必要ですが、胸を開けて心臓を露出することなく、体外循環装置も使わず、はるかに患者さんに優しい手術が可能です。すでに15例この手術を行っていますが、高齢の方であっても皆さん元気になって頂いています。

このような手術はまだ医療保険が使えませんが(注:実質負担額を減らす制度は様々あります)、保険で費用がまかなえる時代もすぐ来ると思います。通常の手術は厳しいとお考えの患者さん、ご家族の方は、当院までご連絡頂ければ幸いです。時間をかけて相談させて頂きます。

 

★「順を追って手技説明したビデオ(全7分間)」や「使用デバイス実物写真」も用意しました。以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。

https://qlifebox.jp/handai/

一般向けに配慮・再構成しておりますが、実際の手術の様子を撮影したものですのでご留意ください

 

 

(こちらは医療者向け説明です)

弓部大動脈疾患に対するステントグラフト治療は、頚部分枝にバイパスを行ってその後にTEVARを施行する、いわゆるdebranching TEVARがトピックスとなっており、通常の体外循環を用いる弓部大動脈人工血管置換術に比較して、低侵襲で行うことが出来るとされている。しかしdebranching TEVARは頚部分枝に対するバイパス、さらには上行大動脈からのtotal debranching TEVARでは開胸を行った上に、上行大動脈からのバイパスをせざるを得なくなり、その低侵襲性は極めて希薄となってしまっている。

 そこで今回は、枝付きステントグラフトを用いてtotal endovascular aortic repairを施行したビデオを供覧する。このステントグラフトは写真(添付の画像ファイルをご覧ください)のように大きな穴を有し、その穴からデバイス中枢側に2本のトンネルが形成されている。そのトンネルに頚部分枝(腕頭動脈と左頸動脈)から小口径ステントグラフトを挿入することにより、体内で枝付きステントグラフトが完成する。手術においては数カ所ステント挿入に血管の露出が必要であるが、開胸などの大きな手技は必要なく、この症例ではAxillo-axillar bypassのみ行ったが、全頚部分枝バイパスは必要ない。メインデバイスもRelayNBS plusを元に作成されているため、Bare stentもなく上行大動脈からのデプロイも問題ない。

今後、世界初で日本にこのデバイスが保険償還できれば、画期的なことであり、切に期待したい。

 

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“No more rapid pacing”・・・Medtoronic社の新デバイスCoreValveの症例を供覧します

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カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が次のステージに進んだことを示す象徴的なビデオです。

阪大でのCoreValve使用においては、バルーンによる大動脈弁形成(BAV)や、一時的に血流を最小化するための心室ペーシング(rapid pacing)が不要となるケースが増えています。これによりTAVIの安全性がさらに高まったと考えられます。

そのあたりの事情を説明しますと・・・(倉谷教授・談)⇒「2015年4月に臨床治験から2年経て、CoreValveが承認されました。まだ保険償還されていませんが、阪大は治験施設であったことより数例使用するチャンスを得ました。ただし最近のCoreValveの術式は治験時とは全く変わり、ほとんどの症例でpre-BAVを行わずTAVIを施行してます。ですからpost-BAVをしなければ、全くrapid pacingをしないでTAVIが完了するわけです。またBAVをしないことで、CoreValveを最初に弁輪に圧着するまでが、非常に安定したため正確な場所に、安心して留置できます。No more rapid pacingです、これはかなりいいですよ。麻酔方法も色々と考えられるし。」

今回共有するのは、pre-BAVなしのCoreValve留置プロセスの一部分です。

★「CoreValveの開きはじめから手術完了までの全プロセスを編集した動画」も用意しました。以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。

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ACURATE TFでのTAVI症例を供覧します

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「TAVI」=経カテーテル大動脈弁留置術は、心臓が動いている状態のままカテーテルを使って人工弁を心臓に装着する治療法で、大動脈弁狭窄症などに用いられます。開胸手術に比べて低侵襲です。TAVIには、太ももの付け根の大腿動脈から挿入する方法と、肋骨の間から挿入する方法の、主に2つがありますが、今回紹介するのは前者のわかりやすいアニメーションです。この弁移植術がどのような方法で行われるのか大変わかりやすい内容になっているので、どうぞご覧ください。
 アニメーションはスイスのTAVIシステム会社:SYMETIS  Inc社によるものです。同社の製品=「ACURATE TF(TM)」TAVIシステムを使った経大腿弁移植術は、阪大の心臓血管外科で日本で初めて行われました。その時の2症例は、当該システムのPMDA(医薬品医療機器総合機構)申請に際しての裏付けとなるフィージビリティスタディの役目も果たしています。
 ★実際の手術の様子も動画で用意しました。室内カメラの実写やX線撮影の動画ファイルが以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。
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冠動脈が弁輪に近いTAVI症例

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カテーテル大動脈弁留置術 (TAVI, transcatheter aortic valveimplantation)の症例紹介です。患者さんは81歳の女性です。冠動脈が弁輪に近く(Low take-off)、弁留置の際に冠動脈閉塞のリスクがありました。そのため、あらかじめ左冠動脈にバルーンを入れておくことで、閉塞時にすぐにPCIで対応可能な状態にて、弁を留置しました。右総大腿動脈よりSAPIEN XT 23mmを用いました。留置後大動脈造影上、弁周囲逆流は軽度で、幸い左冠動脈も無事でした。
もっと詳しい説明や動画ダウンロードが以下URLから(医療者限定ですが)可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。

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