OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

『TAVIの増加、広がり』(全4回の2:最新の地域勉強会資料より)

 

本日は、全4本の2つ目です。お役に立てば幸いです。

「TAVIの今」の総括紹介資料を供覧します。11月に地域の循環器内科の先生方をお招きして合同勉強会を開催しました。その際に当科の鳥飼慶Dr.が行ったプレゼンのダイジェスト版です。

-----------

日本で初めて薬事承認されたTAVIデバイスは、Edwards社製のSAPIEN XTです。術後5年間の経過では、内科的治療と比べて良好で、開心術での弁置換に比べて遜色ない結果です。 次に薬事承認されたのはMedtronic社製のCoreValveで、こちらも開心術に比べて良い成績を残しています。さらに今年の6月には新しいデバイスの治験が始まりました。 TAVIの特徴は、ハイブリッド手術室で施行することと、科を越えた「ハートチーム」で対応することです。こうした治療を行う病院は全国80施設に広がってきました。

※医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。(無断での転用はご遠慮ください)

https://qlifebox.jp/handai/

『TAVIを取り巻く環境』(全4回の1:最新の地域勉強会資料より)


『TAVIを取り巻く環境』(全4回の1:最新の地域勉強会資料より)

「TAVIの今」の総括紹介資料を供覧します。11月に地域の循環器内科の先生方をお招きして合同勉強会を開催しました。その際に当科の鳥飼慶Dr.が行ったプレゼンのダイジェスト版です。本日は、全4本の1つ目です。参考になれば幸いです。

-----------

TAVIは循環器領域の低侵襲手術の代表例です。日本初のTAVI症例は91歳男性でした。危険性が高くすでに外科的手術の施行はほぼ不可能な方でしたが、TAVI(心尖部アプローチ)で大動脈弁置換をしたところ術後良好で、術後は自宅で畑仕事を楽しまれるまでにすぐ回復し、97歳まで生きられました。 高齢者人口の増加に伴い、大動脈弁手術数は右肩上がりで増えていますが、まだまだ根治治療が施されずにいる患者さんは多いようです。海外の複数の研究でも「重症AS(大動脈弁狭窄症)患者の30-50%前後が弁置換をしないまま」と報告されています。 理由の一つは、患者さんが高齢だと「もはや大手術には耐えられない」とご本人もかかりつけ医も考えがちだからです。ところが昨今は「低侵襲」な治療法が次々と登場してきました。

※医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。(無断での転用はご遠慮ください)

https://qlifebox.jp/handai/

CENSニュースレターにて特集されました

最近発行されたCENSニュースレター(日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会)に、阪大・心臓血管外科での外科医育成の様子が特集にて掲載されました。
圧倒的な症例数、優秀な人材、関連施設数のなかで若手がもまれ、入局5年目にはTAVIの経大腿アプローチ(TF)やTEVARまでも経験できる様子が記載されています。他大学からの入局希望者が多い、フェアでオープンな医局運営も特徴です。
若いうちに経験を積むことに興味ある心臓血管外科志望者は、ぜひご連絡ください!(dr#tss.med.osaka-u.ac.jp<#は@に換えてください>)

 

f:id:OsakaMICT:20151015103046j:plain

腎臓と下肢に血流障害ある真腔狭小化した急性B型解離へのend-scissors technique and TEVAR症例を供覧

youtu.be

 

(一般の方向け説明)
 大動脈の血管の壁は3重層の膜で出来ていますが、その内膜のどこかに穴が空いて、内膜と外膜との隙間に血液が流れこんでしまう状態を、大動脈解離と呼びます。動脈硬化などが原因で最近発症する患者さんは増えており、激しい胸痛や背部痛が突然に生じます。解離が心臓に近い部分で生じているとStanfordA型、そうでないものをB型と分類し、B型はA型に比べると即座に手術が必要とは限りませんが、B型のうち臓器障害などが合併している場合には緊急手術を要します。
 今回紹介する症例はB型の患者さんです。解離の悪影響により腎臓と下肢に流れる血流が乏しくなっていて危険な状態でした。このような場合、臓器の血流障害/環流障害を先に治療して、その後にB型解離の治療を行うのが一般的ですが、特に真腔(血液の本来の通り道)が狭い場合には開腹、開胸して人工血管置換やバイパス術をすることとなり、患者さんに大きな負担が伴う治療となります。
 そこで我々は、カテーテル経由でend-scissors techniqueという手法を用い、re-entry(血液が合流している部分)を拡げることで、真腔を拡大し下肢への血流も改善しました。そしてTEVAR(ステントグラフト内挿術)を行いました。その結果、大動脈解離そのものはもちろん、腎機能も下肢血流も正常化して、患者さんは元気に退院されました。今は外来通院中です。適切な手術を行ったことで、ベッドでの安静を長期にわたって強いられることもなく、短い入院で社会復帰できました。
 このようなB型解離に対するTEVARを使った体に優しい手術は、我々のチームが最も得意としています。これからの医療は、患者さんの生活の質(Quality of life)が術後十分に期待できる治療を行うことが、重要と考えています。心臓の弁や大動脈の治療相談あればpts★tss.med.osaka-u.ac.jp(★を@に換えて)にメールをお送りくだされば、できる限り対応いたします。
 
▼ 「順を追って手技を説明したビデオ(全1.5分間)」を用意しました。以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎です。
https://qlifebox.jp/handai/

 

f:id:OsakaMICT:20150901171020j:plain


(こちらは医療者向け説明です)

症状のある急性B型解離(Complicated acute type B)に対する治療は、困難を伴います。特に臓器血流障害(腹部臓器、下肢などへのmalperfusion)を呈する症例では、血流障害の治療をいかに行うかが大きな課題です。一般的には臓器血流障害の治療を先行するのが重要とされますが、当該治療を通常の人工血管置換やバイパス、または開腹、開胸によるfenestration(flapを切ってre-entryを作成する)はさらに侵襲的です。  そこで今回、我々は腎臓および下肢に血流障害を認めた真腔が極めて狭小化した急性B型解離に対して、end-scissors techniqueを用いてreentryの拡大(fenestration)を行いました。これによって真腔が拡大してcentral repairとしてendovascular aortic repair (TEVAR)を施行することができました。これらの治療により完全に臓器障害(腎機能および下肢血流の正常化)を解消することができ、元気に退院されて外来通院中です。  B型大動脈解離は、血流障害治療と同時にcentral repairであるentry閉鎖を行う必要がありますが、今回行った方法では、侵襲度が低く、患者負担が小さな治療となります。

切らない弓部大動脈瘤手術---枝付きステントグラフト(Bolton double side branch device)症例を供覧します

youtu.be

 

(一般の方向け説明)

これまで、弓部大動脈瘤(脳に血流を送る3本の血管が枝分かれしている弓部大動脈に大動脈瘤ができたもの)に対する手術といえば、胸を切開して、心臓を止めて、脳及び体に体外循環装置から血流を送り続けながら、その部分を全て人工血管に替える大手術が必要でした。

それに代わりここ数年は、ステントグラフト内挿術および頚部分枝バイパス術を併用したハイブリッド手術が行われるようになり、侵襲度が従来に比べて減りました。ただ患者さんからすればこれも身体に優しい治療とは言えず、特に高齢の患者さんや他の病気を合わせてお持ちの患者さんにとっては辛い手術でした。

そこで我々は、最近「枝付きステントグラフト」を用いた手術を行うようになりました。この方法ならば、数カ所小さな切開は必要ですが、胸を開けて心臓を露出することなく、体外循環装置も使わず、はるかに患者さんに優しい手術が可能です。すでに15例この手術を行っていますが、高齢の方であっても皆さん元気になって頂いています。

このような手術はまだ医療保険が使えませんが(注:実質負担額を減らす制度は様々あります)、保険で費用がまかなえる時代もすぐ来ると思います。通常の手術は厳しいとお考えの患者さん、ご家族の方は、当院までご連絡頂ければ幸いです。時間をかけて相談させて頂きます。

 

★「順を追って手技説明したビデオ(全7分間)」や「使用デバイス実物写真」も用意しました。以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。

https://qlifebox.jp/handai/

一般向けに配慮・再構成しておりますが、実際の手術の様子を撮影したものですのでご留意ください

 

 

(こちらは医療者向け説明です)

弓部大動脈疾患に対するステントグラフト治療は、頚部分枝にバイパスを行ってその後にTEVARを施行する、いわゆるdebranching TEVARがトピックスとなっており、通常の体外循環を用いる弓部大動脈人工血管置換術に比較して、低侵襲で行うことが出来るとされている。しかしdebranching TEVARは頚部分枝に対するバイパス、さらには上行大動脈からのtotal debranching TEVARでは開胸を行った上に、上行大動脈からのバイパスをせざるを得なくなり、その低侵襲性は極めて希薄となってしまっている。

 そこで今回は、枝付きステントグラフトを用いてtotal endovascular aortic repairを施行したビデオを供覧する。このステントグラフトは写真(添付の画像ファイルをご覧ください)のように大きな穴を有し、その穴からデバイス中枢側に2本のトンネルが形成されている。そのトンネルに頚部分枝(腕頭動脈と左頸動脈)から小口径ステントグラフトを挿入することにより、体内で枝付きステントグラフトが完成する。手術においては数カ所ステント挿入に血管の露出が必要であるが、開胸などの大きな手技は必要なく、この症例ではAxillo-axillar bypassのみ行ったが、全頚部分枝バイパスは必要ない。メインデバイスもRelayNBS plusを元に作成されているため、Bare stentもなく上行大動脈からのデプロイも問題ない。

今後、世界初で日本にこのデバイスが保険償還できれば、画期的なことであり、切に期待したい。

 

f:id:OsakaMICT:20150818112256p:plain

“No more rapid pacing”・・・Medtoronic社の新デバイスCoreValveの症例を供覧します

youtu.be

 

カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が次のステージに進んだことを示す象徴的なビデオです。

阪大でのCoreValve使用においては、バルーンによる大動脈弁形成(BAV)や、一時的に血流を最小化するための心室ペーシング(rapid pacing)が不要となるケースが増えています。これによりTAVIの安全性がさらに高まったと考えられます。

そのあたりの事情を説明しますと・・・(倉谷教授・談)⇒「2015年4月に臨床治験から2年経て、CoreValveが承認されました。まだ保険償還されていませんが、阪大は治験施設であったことより数例使用するチャンスを得ました。ただし最近のCoreValveの術式は治験時とは全く変わり、ほとんどの症例でpre-BAVを行わずTAVIを施行してます。ですからpost-BAVをしなければ、全くrapid pacingをしないでTAVIが完了するわけです。またBAVをしないことで、CoreValveを最初に弁輪に圧着するまでが、非常に安定したため正確な場所に、安心して留置できます。No more rapid pacingです、これはかなりいいですよ。麻酔方法も色々と考えられるし。」

今回共有するのは、pre-BAVなしのCoreValve留置プロセスの一部分です。

★「CoreValveの開きはじめから手術完了までの全プロセスを編集した動画」も用意しました。以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。

https://qlifebox.jp/handai/

ACURATE TFでのTAVI症例を供覧します

youtu.be

「TAVI」=経カテーテル大動脈弁留置術は、心臓が動いている状態のままカテーテルを使って人工弁を心臓に装着する治療法で、大動脈弁狭窄症などに用いられます。開胸手術に比べて低侵襲です。TAVIには、太ももの付け根の大腿動脈から挿入する方法と、肋骨の間から挿入する方法の、主に2つがありますが、今回紹介するのは前者のわかりやすいアニメーションです。この弁移植術がどのような方法で行われるのか大変わかりやすい内容になっているので、どうぞご覧ください。
 アニメーションはスイスのTAVIシステム会社:SYMETIS  Inc社によるものです。同社の製品=「ACURATE TF(TM)」TAVIシステムを使った経大腿弁移植術は、阪大の心臓血管外科で日本で初めて行われました。その時の2症例は、当該システムのPMDA(医薬品医療機器総合機構)申請に際しての裏付けとなるフィージビリティスタディの役目も果たしています。
 ★実際の手術の様子も動画で用意しました。室内カメラの実写やX線撮影の動画ファイルが以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎いたします。
https://qlifebox.jp/handai/