OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

『TAVIの課題とこれから』(全4回の4:最新の地域勉強会資料より)

 

『TAVIの課題とこれから』(全4回の4:最新の地域勉強会資料より)

いよいよ全4本の最後です。参考になれば幸いです。TAVIは良い面だけでなく課題もあります。その内容と解決への動きを紹介いたします。
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TAVIにも弱点はあります。ただし「弁周囲逆流」に関しては、既に日本でも治験開始されているLotusValveで大幅な改善が見込まれます。既に海外では、その次の世代のデバイス群が導入されており、日本での展開が待たれます。
いずれにせよ開心術ハイリスク弁膜症患者に対する経カテーテル臓弁治療は、このところ急ピッチで発展していますので、有効な低侵襲治療オプションとして期待され、今後の弁膜症治療体系を大きく変える可能性があります。
昨年11月に地域の循環器内科の先生方をお招きした合同勉強会での鳥飼慶Dr.プレゼンを、ダイジェスト版にして公開します。)
医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。ただし無断転用はご遠慮ください。

無断での転用はご遠慮ください)

https://qlifebox.jp/handai/

 

 

ドイツの論文:TAVI術数が外科手術数を上回る

ちょうど前回投稿に関連の記事が、昨日の日経メディカルに出ました。NEJM(IFが1位、つまり世界で最も引用・信用されている医学雑誌)が掲載したドイツの論文です。「TAVIでの治療数が、外科手術をすでに上回った」とのこと。治療成績はというと、80-84歳では、状態がより厳しい患者さんの場合にTAVIを使うことが多いにも関わらず院内死亡率は同じ。ただし75歳未満ではTAVIの方が高かったようです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/201601/545355.html

 

『TAVIの成績』(全4回の3:最新の地域勉強会資料より)

 

 

『TAVIの成績』(全4回の3:最新の地域勉強会資料より)

本日は、全4本の3つ目です。参考になれば幸いです。過去2回でTAVIの普及状況を紹介しましたが、「では実際の治療成績はどうなのか?」を公開しています。
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日本でのTAVIの普及は米国などに遅れを取っていますが、施行成績は良好です。ハイリスクが中心にもかかわらず術後30日の生存率は98%であり、海外の他の統計と比べても良い結果を残しています。
阪大の成績も良好で、総症例数は国内TOPです。
昨年11月に地域の循環器内科の先生方をお招きした合同勉強会での鳥飼慶Dr.プレゼンを、ダイジェスト版にして公開します。)
医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。ただし無断転用はご遠慮ください。
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『TAVIの増加、広がり』(全4回の2:最新の地域勉強会資料より)

 

本日は、全4本の2つ目です。お役に立てば幸いです。

「TAVIの今」の総括紹介資料を供覧します。11月に地域の循環器内科の先生方をお招きして合同勉強会を開催しました。その際に当科の鳥飼慶Dr.が行ったプレゼンのダイジェスト版です。

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日本で初めて薬事承認されたTAVIデバイスは、Edwards社製のSAPIEN XTです。術後5年間の経過では、内科的治療と比べて良好で、開心術での弁置換に比べて遜色ない結果です。 次に薬事承認されたのはMedtronic社製のCoreValveで、こちらも開心術に比べて良い成績を残しています。さらに今年の6月には新しいデバイスの治験が始まりました。 TAVIの特徴は、ハイブリッド手術室で施行することと、科を越えた「ハートチーム」で対応することです。こうした治療を行う病院は全国80施設に広がってきました。

※医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。(無断での転用はご遠慮ください)

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『TAVIを取り巻く環境』(全4回の1:最新の地域勉強会資料より)


『TAVIを取り巻く環境』(全4回の1:最新の地域勉強会資料より)

「TAVIの今」の総括紹介資料を供覧します。11月に地域の循環器内科の先生方をお招きして合同勉強会を開催しました。その際に当科の鳥飼慶Dr.が行ったプレゼンのダイジェスト版です。本日は、全4本の1つ目です。参考になれば幸いです。

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TAVIは循環器領域の低侵襲手術の代表例です。日本初のTAVI症例は91歳男性でした。危険性が高くすでに外科的手術の施行はほぼ不可能な方でしたが、TAVI(心尖部アプローチ)で大動脈弁置換をしたところ術後良好で、術後は自宅で畑仕事を楽しまれるまでにすぐ回復し、97歳まで生きられました。 高齢者人口の増加に伴い、大動脈弁手術数は右肩上がりで増えていますが、まだまだ根治治療が施されずにいる患者さんは多いようです。海外の複数の研究でも「重症AS(大動脈弁狭窄症)患者の30-50%前後が弁置換をしないまま」と報告されています。 理由の一つは、患者さんが高齢だと「もはや大手術には耐えられない」とご本人もかかりつけ医も考えがちだからです。ところが昨今は「低侵襲」な治療法が次々と登場してきました。

※医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。(無断での転用はご遠慮ください)

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CENSニュースレターにて特集されました

最近発行されたCENSニュースレター(日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会)に、阪大・心臓血管外科での外科医育成の様子が特集にて掲載されました。
圧倒的な症例数、優秀な人材、関連施設数のなかで若手がもまれ、入局5年目にはTAVIの経大腿アプローチ(TF)やTEVARまでも経験できる様子が記載されています。他大学からの入局希望者が多い、フェアでオープンな医局運営も特徴です。
若いうちに経験を積むことに興味ある心臓血管外科志望者は、ぜひご連絡ください!(dr#tss.med.osaka-u.ac.jp<#は@に換えてください>)

 

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腎臓と下肢に血流障害ある真腔狭小化した急性B型解離へのend-scissors technique and TEVAR症例を供覧

youtu.be

 

(一般の方向け説明)
 大動脈の血管の壁は3重層の膜で出来ていますが、その内膜のどこかに穴が空いて、内膜と外膜との隙間に血液が流れこんでしまう状態を、大動脈解離と呼びます。動脈硬化などが原因で最近発症する患者さんは増えており、激しい胸痛や背部痛が突然に生じます。解離が心臓に近い部分で生じているとStanfordA型、そうでないものをB型と分類し、B型はA型に比べると即座に手術が必要とは限りませんが、B型のうち臓器障害などが合併している場合には緊急手術を要します。
 今回紹介する症例はB型の患者さんです。解離の悪影響により腎臓と下肢に流れる血流が乏しくなっていて危険な状態でした。このような場合、臓器の血流障害/環流障害を先に治療して、その後にB型解離の治療を行うのが一般的ですが、特に真腔(血液の本来の通り道)が狭い場合には開腹、開胸して人工血管置換やバイパス術をすることとなり、患者さんに大きな負担が伴う治療となります。
 そこで我々は、カテーテル経由でend-scissors techniqueという手法を用い、re-entry(血液が合流している部分)を拡げることで、真腔を拡大し下肢への血流も改善しました。そしてTEVAR(ステントグラフト内挿術)を行いました。その結果、大動脈解離そのものはもちろん、腎機能も下肢血流も正常化して、患者さんは元気に退院されました。今は外来通院中です。適切な手術を行ったことで、ベッドでの安静を長期にわたって強いられることもなく、短い入院で社会復帰できました。
 このようなB型解離に対するTEVARを使った体に優しい手術は、我々のチームが最も得意としています。これからの医療は、患者さんの生活の質(Quality of life)が術後十分に期待できる治療を行うことが、重要と考えています。心臓の弁や大動脈の治療相談あればpts★tss.med.osaka-u.ac.jp(★を@に換えて)にメールをお送りくだされば、できる限り対応いたします。
 
▼ 「順を追って手技を説明したビデオ(全1.5分間)」を用意しました。以下URLから(医療者限定ですが)ダウンロード可能です。ご質問、ご相談もお受けします。総合内科医など開業の先生方も歓迎です。
https://qlifebox.jp/handai/

 

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(こちらは医療者向け説明です)

症状のある急性B型解離(Complicated acute type B)に対する治療は、困難を伴います。特に臓器血流障害(腹部臓器、下肢などへのmalperfusion)を呈する症例では、血流障害の治療をいかに行うかが大きな課題です。一般的には臓器血流障害の治療を先行するのが重要とされますが、当該治療を通常の人工血管置換やバイパス、または開腹、開胸によるfenestration(flapを切ってre-entryを作成する)はさらに侵襲的です。  そこで今回、我々は腎臓および下肢に血流障害を認めた真腔が極めて狭小化した急性B型解離に対して、end-scissors techniqueを用いてreentryの拡大(fenestration)を行いました。これによって真腔が拡大してcentral repairとしてendovascular aortic repair (TEVAR)を施行することができました。これらの治療により完全に臓器障害(腎機能および下肢血流の正常化)を解消することができ、元気に退院されて外来通院中です。  B型大動脈解離は、血流障害治療と同時にcentral repairであるentry閉鎖を行う必要がありますが、今回行った方法では、侵襲度が低く、患者負担が小さな治療となります。