OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その4

今年の市民講座(一般の皆さまが参加できる会)は、講演会だけでなく、ワークショップも行いました。写真は「君が外科医になるセミナー」というイベントのワンシーンです。【日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会】という団体の主催するイベントでした。
小学生、中学生、高校生、医学生を対象にしており「みなさんに外科手技に触れてもらうことで、将来少しでも外科医を目指してもらう人が増えるように!」との想いで近年試みられているイベントです。

 

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夢中でカテーテル操作や縫合の練習をする子供たちの視線はとても純粋で熱いものでした。中学生がカテーテルを用いた大動脈弁植込み術(TAVI)を行い、当科の前田先生が指導しているシーンです。実際の手術と同じ画像をモニターに出し、シミュレータを用いてTAVIを行ってもらいました。中学生たちが本物と同じカテーテルを操作し、今からまさに人工弁を植込もうとしているところで、弁の至適位置を前田先生が指導しているところです。

 

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中学生が冠動脈バイパス術を行い、当科の矢嶋先生が指導しているところです。天皇陛下が受けた手術と同じ手術を中学生に模擬血管を用いて行ってもらいました。この手術に使用する糸は髪の毛よりも細く、非常に繊細な技術が必要です。実際の手術で使用する糸を用いて中学生に血管吻合をしてもらいました。難しかったとは思いますが、実際に使う器具や糸、扱う血管の細さなど日常生活では決して体験できないことを体験してもらえたと思います。将来、医学の道に進んでもらえたら嬉しいですね!もちろん、外科医として我々の仲間になってくれたら最高です。

 

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中学生に皮膚縫合をしてもらっているところです。実際の器具、針、糸を使用してもらい人工皮膚を縫合してもらいました。外科手技の基本である縫合、結紮(けっさつ)を体験していただきました。糸結びは初めはみんな難しそうにしていたのですが、みんな要領を得るとどんどん上手に結べるようになり、中には外科医顔負けの強者もいました。指導する側のスタッフも、自然と熱が入ります。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その3

参加者の親睦を図るための「前夜祭」「全員懇親会」も行われました・・・外科医師の数が急激に減少している昨今で相互連携を深めていくきっかけを提供できたでしょうか?研究発表やディスカッションの場とは違う華やかな雰囲気で、準備の苦労も吹き飛びました。

 

f:id:OsakaMICT:20160517105219j:plain拡大プログラム委員会という学会の前夜祭にあたる会で、ジャズ歌手のマリーンさんに登場していただきました。会場全体で盛り上がり、最後は会頭の澤教授も壇上に上がりました。 

 

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大阪出身でワインのソムリエでもある辰巳琢郎さんには前夜祭のワインを選んでいただきました。辰巳琢郎さんのお嬢さんの真理恵さんはソプラノ歌手として活躍されており、前夜祭でもその美声を披露していただきました。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その2

日本外科学会といえば、外科系学会で最大級です。無事に成功させることは、大阪大学外科学講座に所属する全員の使命でした。

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だるま(次期日本外科学会会頭である群馬大学の桑野博行教授からいただきました)を用意したのですが、無事に成功して両方に点睛することができました!今、このだるまは教授室に飾られています!

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多くの方から我々スタッフに対してねぎらいの言葉を頂戴し、感慨ひとしおでした!有難うございました。	

日本外科学会の舞台裏スナップ、その1

先月、第116回の日本外科学会定期学術集会が開催されました。外科系で最大級の学会です。今年は大阪大学の澤教授が会頭を務め、大阪大学外科学講座全員総力で開催をいたしました!大阪での開催は9年ぶりでしたが、ご参加くださった皆様、いかがでしたでしょうか?
 
シンボルキャラクターとして我々大阪大学の大先輩、手塚治虫先生のブラック・ジャックを採用しました。全体テーマは「新しい外科学の価値を創造する」です。内視鏡手術、ロボット手術など術式の多様化・低侵襲化はもとより、iPS細胞の登場で加速している再生医療と外科手術との集学的治療の現状をアップデートするディスカッションが盛んに行われました。
さらには、新専門医制度、外科医の待遇、NCDの活用、外科医に求められる医療安全、女性外科医の活躍推進、若手外科医に対するキャリアパスといった、重要な問題もあわせて議論されました。特に若手外科医のためのセッションも多く設けられました。「新しい外科学の価値」の芽吹きが大いに実感できる有意義な会になったのではないかと思います!ご協力をいただいた皆様、大変に有難うございました!
 

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今回、我々スタッフはイエローゴールドのネクタイ着用で統一しました。どこから見ても目立つこのネクタイは学会を訪れた方々の目からもすぐ「会のスタッフだ」と判別できて、大変好評でした。多くの方から「みんなで揃えているんですね。わかりやすくていいですね。」とお声をかけていただきました。
 

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「日本の大血管治療の明日」について語りあっているのでしょうか!  右は神戸大学の大北教授です。当教室の教授の倉谷と。

鳥飼慶Dr.の発表が日経メディカルに掲載されました

当科の鳥飼慶Dr.が第80回日本循環器学会学術集会(JCS2016、仙台)で発表した、日本のTAVI(カテーテル的大動脈弁留置術)実臨床成績が欧米に比べて良好とのデータが、今日の日経メディカルに記事掲載されました。
我が国の症例は、欧米よりもリスクが高い大動脈弁狭窄症(AS)患者が多く含まれると推測されるにもかかわらず、生命予後が非常に良好で、「30日死亡率は1.2%」です。欧米では8%前後なので、明らかに低いと言えるでしょう。180日全生存率は94.5%です。
※同じ内容が、当サイトの過去投稿(1月8日)記事にも詳しく出ていますので、そちらも併せてご覧ください。QLifeBOX内でも見られます。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/report/201603/546317.html

本邦初のNellixによるEndovascular aortic sealing (EVAS)治療症例のご供覧

本邦初のNellixによるEndovascular aortic sealing (EVAS)治療症例のご供覧

~低侵襲腹部大動脈瘤治療の新しい治療法がいよいよ日本でも~

 

【背景】

 2006年に本邦でも腹部大動脈瘤に対してステントグラフト治療(Endovascular aortic repair: EVAR)が導入され、その治療方法は、その低侵襲性により急激にその数は増大し、2013年から年間の腹部大動脈瘤治療の半数以上がEVARで施行されています。

 ところがこの治療方法の術後にはendoleak(ステントグラフトと大動脈壁内壁の間に血液の漏れが起こること)という問題がつきまとうことは周知の事実であり、特にtype II endoleak(元々大動脈瘤から分岐していた細い血管が、ステントグラフト挿入後に逆流して瘤内に血流を起こし、完治を妨げる)はその治療方法において難渋しているのが現状です。我々のEVAR症例での解析では、術後早期には症例数の31.5%にtype II endoleakを認め、遠隔期でも27.6%を認めています。さらに驚くことに、そのtype II endoleakを認めた症例のうち42%(全症例数の11.6%)の症例で瘤の拡大を認めています。大動脈瘤治療の最終目的が瘤破裂防止であるならば、その原因となる瘤拡大は防がなければなりません。今回のデータを基に考えると、現状でのEVAR治療は低侵襲性が前面に出ているもののradical surgery(根治手術)ではなくpalliative surgery(姑息手術)と言わざるを得ません。

 

【EVASとは】

 このtype II endoleakを如何に減らし(もしくは完全になくし)、低侵襲治療で腹部大動脈瘤を根治するか?この大きな命題に回答してくれたのが、Endologix社のNellixです。他社がlow profile化(デバイスを細く)、flexibility(よく曲がる)の改善を進めてきた中、Endologixは瘤内部をpolymerで完全にsealing(埋めてしまう)する方法でtype II endoleakを無くすことを考案しました。

 

【初症例のビデオ】

 今回我々はtype II endoleakの可能性が高い2症例に対してEVASを行いました。手術時間は1時間程度で、非常によくできたシステムとの実感を持ちました。施行手順は動画をご覧ください。

 まず、腎動脈下からiliac bifurcationまでの長さを測り(大動脈径はこの手術には関係ありません)、10mmのballoon expandable typeのステントグラフトを両大腿動脈より挿入して、ステントグラフトをバルーンで拡張した後、そのステントグラフトの周りにあるバッグ(Endobagという)に生理食塩水を圧が180mmHgまで上がるまで注入してその量を決め、造影をして瘤内に漏れがない(endoleakがない)ことを確認します。その上で生理食塩水を完全に吸引し、続いてpolymerを速やかにさっき計測した量を目安に180mmHgまで注入します。これで終了です。

 

【結論】

 すでに欧州では3年前から導入されているデバイスであり、当教室でも数年前から導入を考えていたのですが、やっと最近Endologix社と本格的な相談ができるようになってこのたび実現しました。関係者のお力も借りて、なんとか日本への早期導入を模索したいと思います。もちろん最終的な判断をするためには遠隔成績の十分な観察が必要ですが、低侵襲腹部大動脈治療において根治手術の希望の光が見えてきたのは、患者さんにとって大変喜ばしいことです。本ビデオもぜひシェアして頂ければ幸いです。

梅田の交差点で、51歳の方の大動脈解離の交通事故が報道されましたが・・・

つい最近、梅田の交差点で、痛ましい交通事故がありました。運転していた方は51歳と若いですが、「大動脈解離」を発症して意識を失っていたのではないか、と報道されています。気の毒な事故でしたが、こうした機会をとらえて啓発をするのも医療者の務めなので、重要なことに絞ってお伝えします。もしシェアしてくだされば幸いです。

■大動脈解離とは?
大動脈(心臓から全身に血液を送る血管)の内側の壁が裂け、裂けた内膜と外膜の間に血液が流れ込む病気です。裂けた場所や流れ込む血液の量によっては、意識を失くしたり、心臓が動かなくなって死に至るなど、重篤な症状を起こします。それでいてこの病気は予兆が少なく、発症すると非常に痛みが強いうえに、ほとんどの場合早急な対処が不可欠です。

■気をつけることは?
50歳以上から注意が必要です。なかでも高血圧の方。また、遺伝的要因もあると言われるので、もし家族にこの病気にかかった方がいる場合は、ぜひお近くの心臓血管外科、循環器内科での検査をおすすめします。通常の健康診断ではほぼ見つかりませんので、気になったら受けてみることが大切です。(もちろん関西在住の方なら、私達が対応可能です。pts★tss.med.osaka-u.ac.jpに(★を@に換えて)メール送って頂ければ、ご相談にも、できる限り対応いたします。)
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なおメディアの皆さんも、今回は丁寧な説明つきで報道してくださったところが多いように思います。NHKのニュース番組や産経新聞など、いくつか取材を受けました。
http://www.sankei.com/west/news/160302/wst1603020086-n1.html

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