OsakaMICTの日記

最先端の低侵襲心臓血管治療を紹介します。 どなたもご覧になってください。

日本外科学会の舞台裏スナップ、その1

先月、第116回の日本外科学会定期学術集会が開催されました。外科系で最大級の学会です。今年は大阪大学の澤教授が会頭を務め、大阪大学外科学講座全員総力で開催をいたしました!大阪での開催は9年ぶりでしたが、ご参加くださった皆様、いかがでしたでしょうか?
 
シンボルキャラクターとして我々大阪大学の大先輩、手塚治虫先生のブラック・ジャックを採用しました。全体テーマは「新しい外科学の価値を創造する」です。内視鏡手術、ロボット手術など術式の多様化・低侵襲化はもとより、iPS細胞の登場で加速している再生医療と外科手術との集学的治療の現状をアップデートするディスカッションが盛んに行われました。
さらには、新専門医制度、外科医の待遇、NCDの活用、外科医に求められる医療安全、女性外科医の活躍推進、若手外科医に対するキャリアパスといった、重要な問題もあわせて議論されました。特に若手外科医のためのセッションも多く設けられました。「新しい外科学の価値」の芽吹きが大いに実感できる有意義な会になったのではないかと思います!ご協力をいただいた皆様、大変に有難うございました!
 

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今回、我々スタッフはイエローゴールドのネクタイ着用で統一しました。どこから見ても目立つこのネクタイは学会を訪れた方々の目からもすぐ「会のスタッフだ」と判別できて、大変好評でした。多くの方から「みんなで揃えているんですね。わかりやすくていいですね。」とお声をかけていただきました。
 

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「日本の大血管治療の明日」について語りあっているのでしょうか!  右は神戸大学の大北教授です。当教室の教授の倉谷と。

鳥飼慶Dr.の発表が日経メディカルに掲載されました

当科の鳥飼慶Dr.が第80回日本循環器学会学術集会(JCS2016、仙台)で発表した、日本のTAVI(カテーテル的大動脈弁留置術)実臨床成績が欧米に比べて良好とのデータが、今日の日経メディカルに記事掲載されました。
我が国の症例は、欧米よりもリスクが高い大動脈弁狭窄症(AS)患者が多く含まれると推測されるにもかかわらず、生命予後が非常に良好で、「30日死亡率は1.2%」です。欧米では8%前後なので、明らかに低いと言えるでしょう。180日全生存率は94.5%です。
※同じ内容が、当サイトの過去投稿(1月8日)記事にも詳しく出ていますので、そちらも併せてご覧ください。QLifeBOX内でも見られます。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/dmns/report/201603/546317.html

本邦初のNellixによるEndovascular aortic sealing (EVAS)治療症例のご供覧

本邦初のNellixによるEndovascular aortic sealing (EVAS)治療症例のご供覧

~低侵襲腹部大動脈瘤治療の新しい治療法がいよいよ日本でも~

 

【背景】

 2006年に本邦でも腹部大動脈瘤に対してステントグラフト治療(Endovascular aortic repair: EVAR)が導入され、その治療方法は、その低侵襲性により急激にその数は増大し、2013年から年間の腹部大動脈瘤治療の半数以上がEVARで施行されています。

 ところがこの治療方法の術後にはendoleak(ステントグラフトと大動脈壁内壁の間に血液の漏れが起こること)という問題がつきまとうことは周知の事実であり、特にtype II endoleak(元々大動脈瘤から分岐していた細い血管が、ステントグラフト挿入後に逆流して瘤内に血流を起こし、完治を妨げる)はその治療方法において難渋しているのが現状です。我々のEVAR症例での解析では、術後早期には症例数の31.5%にtype II endoleakを認め、遠隔期でも27.6%を認めています。さらに驚くことに、そのtype II endoleakを認めた症例のうち42%(全症例数の11.6%)の症例で瘤の拡大を認めています。大動脈瘤治療の最終目的が瘤破裂防止であるならば、その原因となる瘤拡大は防がなければなりません。今回のデータを基に考えると、現状でのEVAR治療は低侵襲性が前面に出ているもののradical surgery(根治手術)ではなくpalliative surgery(姑息手術)と言わざるを得ません。

 

【EVASとは】

 このtype II endoleakを如何に減らし(もしくは完全になくし)、低侵襲治療で腹部大動脈瘤を根治するか?この大きな命題に回答してくれたのが、Endologix社のNellixです。他社がlow profile化(デバイスを細く)、flexibility(よく曲がる)の改善を進めてきた中、Endologixは瘤内部をpolymerで完全にsealing(埋めてしまう)する方法でtype II endoleakを無くすことを考案しました。

 

【初症例のビデオ】

 今回我々はtype II endoleakの可能性が高い2症例に対してEVASを行いました。手術時間は1時間程度で、非常によくできたシステムとの実感を持ちました。施行手順は動画をご覧ください。

 まず、腎動脈下からiliac bifurcationまでの長さを測り(大動脈径はこの手術には関係ありません)、10mmのballoon expandable typeのステントグラフトを両大腿動脈より挿入して、ステントグラフトをバルーンで拡張した後、そのステントグラフトの周りにあるバッグ(Endobagという)に生理食塩水を圧が180mmHgまで上がるまで注入してその量を決め、造影をして瘤内に漏れがない(endoleakがない)ことを確認します。その上で生理食塩水を完全に吸引し、続いてpolymerを速やかにさっき計測した量を目安に180mmHgまで注入します。これで終了です。

 

【結論】

 すでに欧州では3年前から導入されているデバイスであり、当教室でも数年前から導入を考えていたのですが、やっと最近Endologix社と本格的な相談ができるようになってこのたび実現しました。関係者のお力も借りて、なんとか日本への早期導入を模索したいと思います。もちろん最終的な判断をするためには遠隔成績の十分な観察が必要ですが、低侵襲腹部大動脈治療において根治手術の希望の光が見えてきたのは、患者さんにとって大変喜ばしいことです。本ビデオもぜひシェアして頂ければ幸いです。

梅田の交差点で、51歳の方の大動脈解離の交通事故が報道されましたが・・・

つい最近、梅田の交差点で、痛ましい交通事故がありました。運転していた方は51歳と若いですが、「大動脈解離」を発症して意識を失っていたのではないか、と報道されています。気の毒な事故でしたが、こうした機会をとらえて啓発をするのも医療者の務めなので、重要なことに絞ってお伝えします。もしシェアしてくだされば幸いです。

■大動脈解離とは?
大動脈(心臓から全身に血液を送る血管)の内側の壁が裂け、裂けた内膜と外膜の間に血液が流れ込む病気です。裂けた場所や流れ込む血液の量によっては、意識を失くしたり、心臓が動かなくなって死に至るなど、重篤な症状を起こします。それでいてこの病気は予兆が少なく、発症すると非常に痛みが強いうえに、ほとんどの場合早急な対処が不可欠です。

■気をつけることは?
50歳以上から注意が必要です。なかでも高血圧の方。また、遺伝的要因もあると言われるので、もし家族にこの病気にかかった方がいる場合は、ぜひお近くの心臓血管外科、循環器内科での検査をおすすめします。通常の健康診断ではほぼ見つかりませんので、気になったら受けてみることが大切です。(もちろん関西在住の方なら、私達が対応可能です。pts★tss.med.osaka-u.ac.jpに(★を@に換えて)メール送って頂ければ、ご相談にも、できる限り対応いたします。)
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なおメディアの皆さんも、今回は丁寧な説明つきで報道してくださったところが多いように思います。NHKのニュース番組や産経新聞など、いくつか取材を受けました。
http://www.sankei.com/west/news/160302/wst1603020086-n1.html

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『TAVIの課題とこれから』(全4回の4:最新の地域勉強会資料より)

 

『TAVIの課題とこれから』(全4回の4:最新の地域勉強会資料より)

いよいよ全4本の最後です。参考になれば幸いです。TAVIは良い面だけでなく課題もあります。その内容と解決への動きを紹介いたします。
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TAVIにも弱点はあります。ただし「弁周囲逆流」に関しては、既に日本でも治験開始されているLotusValveで大幅な改善が見込まれます。既に海外では、その次の世代のデバイス群が導入されており、日本での展開が待たれます。
いずれにせよ開心術ハイリスク弁膜症患者に対する経カテーテル臓弁治療は、このところ急ピッチで発展していますので、有効な低侵襲治療オプションとして期待され、今後の弁膜症治療体系を大きく変える可能性があります。
昨年11月に地域の循環器内科の先生方をお招きした合同勉強会での鳥飼慶Dr.プレゼンを、ダイジェスト版にして公開します。)
医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。ただし無断転用はご遠慮ください。

無断での転用はご遠慮ください)

https://qlifebox.jp/handai/

 

 

ドイツの論文:TAVI術数が外科手術数を上回る

ちょうど前回投稿に関連の記事が、昨日の日経メディカルに出ました。NEJM(IFが1位、つまり世界で最も引用・信用されている医学雑誌)が掲載したドイツの論文です。「TAVIでの治療数が、外科手術をすでに上回った」とのこと。治療成績はというと、80-84歳では、状態がより厳しい患者さんの場合にTAVIを使うことが多いにも関わらず院内死亡率は同じ。ただし75歳未満ではTAVIの方が高かったようです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/201601/545355.html

 

『TAVIの成績』(全4回の3:最新の地域勉強会資料より)

 

 

『TAVIの成績』(全4回の3:最新の地域勉強会資料より)

本日は、全4本の3つ目です。参考になれば幸いです。過去2回でTAVIの普及状況を紹介しましたが、「では実際の治療成績はどうなのか?」を公開しています。
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日本でのTAVIの普及は米国などに遅れを取っていますが、施行成績は良好です。ハイリスクが中心にもかかわらず術後30日の生存率は98%であり、海外の他の統計と比べても良い結果を残しています。
阪大の成績も良好で、総症例数は国内TOPです。
昨年11月に地域の循環器内科の先生方をお招きした合同勉強会での鳥飼慶Dr.プレゼンを、ダイジェスト版にして公開します。)
医師の方はフルのパワーポイント版をQLifeBOXからダウンロードできます。自由にご閲覧ください。ただし無断転用はご遠慮ください。
https://qlifebox.jp/handai/